NPO法人 静岡山の文化交流センター

Shizuoka Mountain Cultural eXchange Center

平成29年度事業報告


1.井川プロジェクト
  成果を上げることはできなかった。
  登山を趣味とする人々にとって井川は重要な拠点集落である。当初、衰退を
  続ける井川をなんとかしたいとの思いから、シンポジューム開催を企画したが、   具体化検討段階で、実状にそぐわない面が見えてきた。
  再検討途上で、静岡市市民自治推進課による「平成29年度 静岡市協働
  パイロット事業募集」を知り、応募したが選ばれなかった。その後も井川で
  情報集めをしたが、具体的な事業化計画に結びつかなかった。
  したがって、交通費・宿泊費が持ち出し経費となった。
  協働パイロット事業募集は、我々の意図する地域おこしのような大きな
  プロジェクトは採用にならず、個々の小さな限定的な計画が採用された。
  このことから、以後の市民自治推進課のパイロット事業には応募しないことと
  した。

2.写真展『未来に残そう、美しい山河』開催協力
  11月7日(火)-12日(日)静岡市市民ギャラリーで開催された静岡市、
  全日本山岳写真協会静岡支部などの主催になる写真展とギャラリートーク
  (望月将悟氏)の開催に協力した。

3.広葉樹植林計画
2018年3月11日(日)に実施された。
場所: 藁科川中流域坂の上、標高750m辺り大平見
     尾崎林業針葉樹皆伐跡地に広葉樹を植林。
参加総人数40名。
  静岡市議 尾崎行雄氏、
  静岡市森林組合長、元静岡市ボーイスカウトの長老、
  静岡大学生、常葉大学生、尾崎林業関係者、NPO法人有志、
  南アルプスファンクラブ有志等。
  尾崎林業の伐採地2.5haの内1haに鹿柵(静岡市補助金事業)ネットを張り、
  1000本のコナラ、イタヤ楓100本、欅100本、山栗50本、もみじ50本、
  クヌギ50本 合計1350本を植え付けた。
  快晴の日和で参加者は嬉々として植林作業に従事した。
  一人の怪我人も体調不良者もなく、スムースに運び、昼食の豚汁とおにぎり
  サービスを楽しんだ。
  この計画は来年も再来年も継続される。
  下刈りは8、9月に実施予定である。
  当計画は、2017年5月段階では、静岡市森林組合から我がNPOが事業委託
  を受けて、受託主体として活動する計画であったが、紆余曲折を経て、
  最終的には尾崎林業との共催となった。
  したがって、静岡市の補助金を計上していた事業計画は修正となり、約8万円
  の苗木費用が持ち出しとなった。今後の計画については、再検討の要あるも
  基本的な姿勢は森の広葉樹林化を推進する立場である。

4.講演会事業

「南アルプス自然の魅力」講演会開催
後援: 静岡県、公益社団法人日本山岳会、
    公益社団法人日本山岳スポーツクライミング協会、
    公益社団法人東京都山岳連盟、
    日本山岳文化学会
日時: 2018年3月17日(土)午後
場所: 東京 明治大学リバティータワー1012教室
講師: 増澤武弘(静岡大客員教授):生物多様性
     長谷川裕彦(明星大准教授):地形・地質
演題: 1独特の自然史-地形と地質?
演題: 2特徴的な生物多様性の世界
座長: 小疇 尚先生(明治大学名誉教授)
学内責任者: 飯田年穂先生(明治大学教授、山岳部長)

結果の概要:
  参加者52名。260名収容の教室であったが、参加者は予想外に少なく、
  若者の動員方法に課題を残した。インターネット、HPを多用したが、効果は
  なかった。私が声をかけた東京の仲間は、参加してくれたが、一人10名を
  動員してくださいという指示が欠落していた反省がある。

長谷川先生の講演概要
  南アルプスでの調査研究に実績のある学者であるが、独特の自然史を
  浮き彫りにした説明には一歩届かなかった感があった。
1)地質の成り立ちは地形を作り、その上に生活する生物と自然景観に
  影響を与える。
2)南アルプスの形成
  南アルプスの大部分は、およそ6,7000年前の地層が褶曲した四万十帯から  なっている。そして、仙丈ケ岳(3033m)、間ノ岳(3189m)、
  悪沢岳(3141m)、荒川岳(中岳、前岳)、赤石岳(3120m)周辺に氷期に
  形成された氷河地形が明瞭に残る。
  また標高1500mを超える山稜や谷には周氷河地形が数多く見られる。
3)隆起する山地
  南アルプスは最近100年間に年間3mm以上の速度で隆起している。
  この速度は日本最速であり、世界の山岳の中でも最速のレベルである。
  この速度で100万年間隆起を続け、現在も隆起中である。この隆起の原因は
  本州孤と伊豆?小笠原孤との直行衝突にある。
4)削られる山地
  南アルプスの山岳地形の特徴は
  山体が大きく、稜線が比較的なだらかで、尖峰が発達しない。
  山腹斜面は底部に向かって急斜面となり、V字谷を造る。
  崩壊地が発達する
  これらの特徴は温暖多雨な気候の河川の浸食作用によるもので、氷河の
  浸食作用でできた尖峰と幅広いU字谷が発達した欧州アルプス型地形とは
  異なる。
5)崩壊地形
  南アルプスに発達する崩壊地形は、急峻な隆起と流水による急速な侵食に
  よって稜線部や山腹斜面が不安定になることに起因している。

増澤先生の講演概要
  いつもながら見事な講演で、内容は分かりやすく 説明も的確で迫力があった。
  世界的に見ても極めてユニークな特徴を有する南アルプスの生物多様性の
  世界を、氷河地形と高山植物やハイマツ帯と雷鳥を中心に説明解説。
  最後10分間、リニア残土問題と生態系の関連を取り上げた。
1)氷河地形と高山植物の関係
  南アルプスの中央部赤石岳、荒川岳周辺に残る氷河地形は日本の南限に
  位置する。内荒川岳南東面に並列する3つのカールは、カール底からカール
  壁まで、その環境傾度に沿って高山植物群落の変化が見られる。
  このカールには周北極要素の植物群が生育し、その分布は日本列島の
  南限である。
2)周北極植物
  北極を中心とした北半球北部に分布する植物で、寒冷期に氷河の拡大と
  ともに南下してきた植物が起源となっている。チョウノスケソウ、ムカゴトラノオ
  などは荒川岳、赤石岳付近が分布の南限で、氷河地形の分布とも一致する。

3)ハイマツ帯と雷鳥
  雷鳥はキタダケソウやチョウノスケソウなどの植物と一緒に、氷河期に北極
  地域からやってきて、高山帯に残った氷河期の遺存種で、ハイマツ帯を
  生息域としていて、厳冬でも高山帯から降りることなく生息している。
  光岳周辺が生息地の南限で、世界の南限でもある。
  最近は、猿や鹿の影響などもあり、個体数が減少していると言われる。
  今後の地球温暖化による影響が懸念される。

4)鹿の食害
  高山帯の高山植物群落に鹿の食害は発生するようになって久しいが、一部に
  鹿柵を設ける以外に抜本的な対策はなく、関係者は一様に困惑している。
  野生動物の高標高域への侵入は、高山植物の被害、踏み込みによる土砂
  流出、裸地化などに対する影響など深刻な問題を引き起こしている。

5)植物生態系とリニア残土置き場問題
  リニアトンネル残土を何処にどの程度置くかという問題は、現地の生態系を
  見極めてからでないと、将来に禍根を残すことになりかねない危惧がある。
  地形と生態系を無視して残土の置き場とその量を決めることは危険であると
  警告し、聴衆の関心を引いた。静岡県、静岡市、特種東海製紙等がJR東海と
  その問題を話し合う場には増澤教授の同席が必須なのではないかと、
  講演参加者全員が納得できるような説明であった。

講演会収支報告
  マイナス128,808円 となった。

平成29年度事業報告に関する総括
  井川プロジェクトに軸足を置く活動展開を考えていたので、
  それがポシャったせいで、大幅な活動縮小となってしまった。
  今後は、井川プロジェクトを長期計画として、年度ごとに個別展開する計画に
  組み立てていく予定である。